症例報告:腹部術後の腰痛が改善した事例
患者様の基本情報
- 年齢:50代女性
- 主訴:腰痛
- 受傷の経緯:数ヶ月前に腹部の手術を受けた後から、腰痛が頻繁に発生するようになった。特に長時間座っているときや、朝起きた直後に強い痛みを感じる。
初診時の状態
患者様は「腰全体に鈍い痛みを感じる」「特に背中の下部が常に張ったように重い」と訴えていました。また、日常生活においても痛みのために動作が遅くなり、家事や趣味への支障を感じている状態でした。
- 痛みの特徴:
- 腰全体が重く、特に仙骨付近に強い張りを感じる。
- 長時間同じ姿勢(座位や立位)でいると痛みが悪化する。
- 動き始めると痛みがやや和らぐものの、長く歩くと再び痛みを感じる。
- 姿勢評価:
- 骨盤が後傾し、背中が丸まった猫背姿勢。
- 腹部を保護するように体が前屈気味で、腰部の筋肉が過緊張している状態。
- 筋肉の状態:
- 腰部の筋群(脊柱起立筋、腰方形筋)の緊張が顕著。特に右側に強い張りと圧痛が確認された。
- 腹部の筋力低下がみられ、体幹全体のサポートが不足している様子。
- 動作確認:
- 前屈動作で腰部に軽い痛みが生じ、後屈では腰全体の張りが増加。
- 下肢の動作では特に異常はないものの、腰部の痛みが動作を制限している様子が見られた。
原因の考察
患者様の腰痛は、術後の体の変化が大きく関与していると考えられました。以下が主な原因と推察されます:
- 術後の姿勢変化
腹部の手術後、傷口を保護しようとする防御的な姿勢により、腰部に過剰な負担がかかっている。骨盤が後傾し、腰椎の自然なカーブが失われている状態が確認された。 - 体幹の筋力低下
手術後の安静期間が長引いたことにより、体幹筋(特に腹筋や腹横筋)の筋力が低下。これにより、腰椎や骨盤を安定させる能力が低下し、腰痛が生じている。 - 筋緊張の亢進
腰部の筋肉が術後の不良姿勢を補おうと過剰に緊張しており、血流不足や筋疲労が慢性的な腰痛を引き起こしていると推察される。
施術計画
- 短期目標(1~4週間)
- 腰部の筋緊張を緩和し、血流を改善する。
- 正しい姿勢を取り戻し、痛みを軽減する。
- 中期目標(4~8週間)
- 腹部および体幹筋の筋力を強化し、骨盤・腰椎の安定性を向上させる。
- 日常生活の中で再発しにくい身体の使い方を指導する。
- 長期目標(8週目以降)
- 長時間の座位や立位でも腰痛が発生しない状態を目指す。
- 日常生活や趣味活動を痛みなく楽しめるようにする。
施術内容
- 徒手療法
- 腰部の筋緊張を緩和するため、腰方形筋や脊柱起立筋への筋膜リリースを実施。特に右側の張りが強い部分には持続圧を加え、筋肉の柔軟性を引き出した。
- 骨盤周囲の動きを改善するため、骨盤調整を行い、正しい姿勢をサポート。
- 体幹トレーニング
- 腹部筋群を活性化させるエクササイズ(ドローイン、ブリッジ運動)を導入。無理のない範囲で実施し、徐々に負荷を増やしていった。
- 腰椎の安定性を向上させるため、背筋を伸ばす運動も併用。
- 姿勢指導
- 骨盤を立てて座る方法を指導し、長時間の座位でも腰部に負担がかかりにくい姿勢を指導。
- 日常生活での姿勢改善や、重いものを持つ際の注意点を具体的に説明。
- ストレッチング
- ハムストリングスや腸腰筋を中心に柔軟性を高めるストレッチを実施。これにより、腰部の動きがスムーズになり、負担が軽減された。
経過と結果
- 第1~2週目:初回施術後、腰部の張りが軽減し、「体が軽くなった」と患者様が実感。長時間座っていても、痛みが悪化しにくくなったとの報告があった。
- 第3~4週目:筋力トレーニングと姿勢指導を継続する中で、腰痛の頻度が大幅に減少。朝起きた際の痛みも軽減され、「以前より動きやすくなった」との声をいただいた。
- 第5~8週目:腰痛がほぼ消失し、日常生活や趣味活動に支障がなくなった。正しい姿勢が身につき、患者様もセルフケアを積極的に取り入れるようになった。
考察
本症例では、術後の姿勢変化と体幹筋の筋力低下が腰痛の主な原因でした。徒手療法で筋緊張を緩和しつつ、体幹トレーニングと姿勢改善を組み合わせたアプローチが功を奏し、腰痛の大幅な改善が見られました。また、患者様自身がセルフケアを継続したことで、再発予防の効果も期待できる状態になりました。
まとめ
腹部術後の腰痛は、適切なアプローチにより改善が可能です。今回の症例では、施術とともに筋力トレーニングや姿勢指導を行うことで、短期間で痛みが改善されました。術後の腰痛でお悩みの方は、ぜひご相談ください。